第1回テーマ
Local Knowledge
都市と地方をつなぐ、知の交わり
General review
審査総評
五十嵐 久枝氏
有限会社イガラシデザインスタジオ / 武蔵野美術大学教授
Z世代の考える働き方について知る機会と思い、興味深く審査に臨んだ。働くことは生きることに直結するとも言えると思うが、応募者の方々はオフィスから飛び出した方がより良い働く場所に辿り着ける、働くことができると考えている様に見えたことが率直に良いことだと感じた。働くことは気持ちよく面白いことであって欲しい。その願望を見せてくれた視点と発想の意外性に何度も驚かされるとても愉快な審査でした。ローカルをテーマにすることで、地方からの応募数も増え、地元近隣ゆえに知るその土地の情報と遺したい魅力について知ることに繋がった。その場所その条件だからこそ実現可能な提案が多く寄せられ、ポテンシャルがまだまだあるそう思えた。また、都心ゆえの悩みもあり無理しても叶えたい願望にも共感を覚えた。これから都市と地方の繋がりにはバーチャルも欠かせない媒体として存在し、より自由で活発な行き来も創造されるでしょう。今回は第一回オフィスデザイン学生コンペでしたが、応募シートにはユニークな表現方法があり、伝え方にも魅せられるものが多くあった。学生ならではの伸びしろと今後の可能性に期待したい審査だと思っています。
猪熊 純氏
成瀬・猪熊建築設計事務所 / 芝浦工業大学准教授
第一回でありながら、とても多様な案が寄せられ、興味深く拝見しました。レベルの高いものも多く見られ、審査も難航しました。賞に残ったものはもちろんのこと、残らなかったものも、コンセプトが面白いもの、グラフィックが美しいものが複数ありました。一方で、仕組みについては、もう少し丁寧に思考したものがあると良いと思いました。特に気になったのが、地方のために、都心側のワーカーがボランタリーな立場になっている設定が多かったことです。都心側のワーカーも、交通費をかけて行くからには、体験だけでなくそこでしか得られない仕事やつながりが欲しいはずですし、そうでなければ持続性が出ません。そうした関係性のイメージはとても大切だと思います。大変良いコンペなので、ぜひ来年もあって欲しいと思いますが、挑戦する人は、こうした事についてもよく考えてみて欲しいです。
塩田 健一
株式会社商店建築社 月刊商店建築 編集長
第1回目の開催であったにもかかわらず、多くの方々からハイレベルな応募作が集まりました。応募いただいた全国の学生の皆さんに感謝を申し上げます。特に、一次審査で高得点を獲得した上位6作品ほどは甲乙つけがたく、二次審査で金・銀・銅賞を決定するに際して、審査員4人で90分以上議論しました。その結果、既視感のない新しい提案を模索し、さらに審査員すらも巻き込んでいく、発展性のあるプラットフォームのような応募作が受賞作として選ばれました。また、社会的課題への解決策を盛り込むなど、「売る人/買う人」だけではなく、地域社会や地球環境といった第三項への恩恵を考慮した応募作も、審査員の目にとまりました。現在、「働く場」を考えるにあたり、「居場所」「心理的安全性」「幸せ」「多様な選択肢」「偶然性」「食」「地域との繋がり」などが重要なテーマになっています。次回以降、そうしたテーマを取り込んだ案にも出会えることも楽しみにしています。
稲田 晋司
株式会社フロンティアコンサルティング 執行役員 デザイン部 部長
事前に設定されたテーマがありながらも、自由な発想で描かれた働き方や、それを実践すべく計画された空間は、いずれも魅力的に映った。今回が第一回目となる本設計競技だが、提出された作品からは、いやが上にも次回への期待が高まる。また参加者それぞれが持つ社会への課題感や、自らの生活環境から着想を得たアイデアは、本制作だけに留まらず、今後の個々の設計活動や社会との接点を育むものになれば嬉しい。地方や郊外をフィールドとした作品の応募が多く、都市を舞台にした作品が少数であったことからは、立地による企画やテーマ実現の難易度が伺え、他作品との差別化や挑戦といった観点で発展の余地があると感じた。